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皆さま、こんにちは。
ナイスオンホールディングスの四ケ所秀樹です。
本日は、ある社長のことを書きます。
もちろん、ご本人の許可をいただいた上で、匿名でお伝えします。
この記事の内容
その会社は、ある新規事業に取り組んでいました。
投資を始めてから、すでに1年以上が経過していました。
数字は、どう見ても厳しい状態でした。
でも、社長は決断できなかった。
なぜか・・
毎月の報告で、こういう言葉が続いたからです。
「社員が一生懸命頑張っています」
「来月は利益が出そうです」
「もうすぐ結果が出ると思います」
その言葉が出るたびに、社長の心は揺れました・・
「頑張っている社員たちを、裏切れない」
「もう少しだけ待てば、変わるかもしれない」
「ここまで投資してきたのに、やめたら全部無駄になる」
そうして、1ヶ月が過ぎ、また1ヶ月が過ぎ・・
気づいたときには、損失がどんどん膨らんでいました。

「もう無理かもしれない」という言葉が出てきたのは、すでに手遅れに近い状態になってからでした。
この話を読んで、こう思った方もいらっしゃるかもしれません。
「もっと早く決断すべきだったのでは」と。
でも、私はそうは思いません。
この社長は、決して能力が低かったわけではありません。
むしろ、人を大切にする、誠実な経営者でした。
問題は、「人を大切にする」という美徳が、判断を歪めてしまったことです。
そして、これは特別な話ではありません。
私がこれまで向き合ってきた多くの社長は、多かれ少なかれ、同じ構造を持っていました。
・・ここまで読んで、もしかすると、
「自分の会社にも似たようなことがあるかもしれない」
そう感じた方もいらっしゃるかもしれません。
前回のブログで「5つのバイアス」をお伝えしました。
その中の一つ、サンクコストバイアス。
これは、すでに使ってしまったお金・時間・労力が、将来の判断に影響を与えてしまう心理的傾向のことです。
経済学的に言えば、「埋没費用」は意思決定に関係ないはずです。
過去の投資額がいくらであろうと、これからの選択に影響を与えるべきではない。
問うべきは、「これまで何を使ったか」ではなく、「これからの選択が何をもたらすか」だけのはずです。
でも、現実はそうはいきません。
冒頭のエピソードで、特に注目してほしい言葉があります。
「社員が一生懸命頑張っています」
これは、サンクコストの中で最も厄介なパターンです。
お金の損失だけなら、まだ数字として見えます。
でも、「人の努力や感情」がサンクコストになると、数字では見えなくなる。
「あれだけ頑張ってくれているのに、やめると言えない」
「ここでやめたら、あのメンバーの努力は何だったんだろうか・・」
そんな思いが、頭をよぎったそうです。
この気持ちは、人間として当然の感情です。
むしろ、そう感じない社長のほうがおかしい。
でも、だからこそ危ない。
「やめる」という判断が、「裏切り」に感じられてしまう。
その瞬間から、判断は感情に支配されます。
「あと少し待てば変わるかもしれない」という希望が、データよりも大きく見えてしまう。
これが、「やめられない」の正体です。
このケースで、もう一つ重要なことがありました。
最初から、「やめる基準」が決まっていなかったのです。
「うまくいかなかったらやめる」という言葉はありました。
でも、「どうなったらやめるか」が、具体的に言葉になっていなかった。
だから、「うまくいっていない」状態が続いても、「まだうまくいっていないとは言い切れない」という解釈が生まれてしまう。
「来月は変わるかもしれない」という期待が、毎月リセットされながら続いていく。
これが、ズルズルと損失が膨らんでいく構造です。
前回のブログで、OFAの3つの核心をお伝えしました。
その中の一つが ——「撤退基準を事前に決める」です。
なぜ「事前に」なのか。
それは、判断の瞬間に感情が入ってくる前に、基準を決めておくためです。
社員が頑張っている姿を見た後では、もう遅い。
「あれだけ努力してくれているのに」という感情が入り込む前に、冷静な状態で「どうなったらやめるか」を決めておく。
これだけで、判断の構造が変わります。
具体的には、こんな問いを事前に言葉にしておきます。
「この事業の継続か否かを判断するとき、何を見るか?」
「どの数字が、どの状態になったら、撤退を検討するか?」
「その基準を、何ヶ月連続で下回ったら、決断するか?」
これを、始める前に
——あるいは今すぐ——
言葉にしてみてください。
最後に、一つだけお伝えしたいことがあります。
「やめる」という判断は、「社員への裏切り」ではありません。
むしろ、逆です。
損失が膨らみ続けた状態で会社が傾いていくことのほうが、社員にとっては取り返しのつかない事態になります。
「社員のために続ける」と「社員のために決断する」は、違います。
撤退基準を持つことは、社員を守るための判断です。
冒頭のエピソードの社長も、最終的には決断しました。
遅かったかもしれない。
でも、決断した。

その後、会社は立て直しの過程に入っています。
「もっと早く決めていれば」・・
と、笑いながらおっしゃっていました。
その言葉が、本日のブログを書いた理由です。
今、社内に「本当はやめるべきかもしれない」と感じている事業・取り組みはありませんか?
もしあれば、本日このことを自問してみてください。
「これを続ける判断の根拠は、未来にありますか?
それとも、過去の投資にありますか?」
その問いへの答えが、次の一歩を教えてくれるはずです。
四ケ所秀樹
ナイスオンホールディングス株式会社
代表取締役
ナイスオン公式ブログ Vol. 1,128
前回:「OFA(組織的失敗回避)とは何か——「成功を保証しない」が、「致命的な失敗は繰り返さない」」
次回:「判断の前提を言語化する——なぜ、社長の「勘」は言葉にする必要があるのか」
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