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皆さま、こんにちは。
ナイスオンホールディングスの四ケ所秀樹です。
少し、意外な話から始めさせてください。
私がインタビューさせていただいた10社の経営者の皆さまは、全員が「危機」を経験していました。
致命的には至らなかった。
でも、あのときのことを振り返ると、背筋が冷たくなる・・

そう語った社長が、一人ではありませんでした。
そして、その危機を経験した後に、全員がやったことがあります。
それは、「やめる基準」を作ること。
偶然ではないと思います。
この記事の内容
前回のブログでは、サンクコストバイアスの話をしました。
「社員が頑張っているから、やめられない」
「ここまで投資したのに、やめたら全部無駄になる」
この感情は、人間として当然のものです。
でも、そのまま放置すると・・
やめるべきタイミングを何度も何度も見送って、気づいたときには損失が手がつけられない状態になっている。
なぜそうなるのか?
「どうなったらやめるか」が、最初から決まっていないからです。
基準がないと、「まだやめるタイミングじゃない」という判断を、感情が何度でもできてしまいます。
「来月は変わるかもしれない」が、毎月リセットされながら続いていく。
219社へのアンケート調査で、興味深いことがわかりました。
撤退・中止の基準を事前に設定している企業と、ここ3年間で営業利益が伸びている企業の間に、正の関係が観察されました。
つまり・・
「やめる基準を持っている会社」のほうが、利益が伸びている傾向がある。

これは、直感に反するように感じるかもしれません。
「やめる基準を持つ」ということは、後ろ向きな話ではないのか?
でも、逆です。
「やめる基準」があるからこそ、安心して挑戦できるのです。
ここで少し、皆さまにも考えてみてほしいことがあります。
世の中には、成功者の本やスキルがあふれています。
「こうすれば成功できる」
「あの経営者はこうやった」
でも、考えてみてください。
10回挑戦して、成功するのは1回かもしれない。
私たちが知っている成功者も、例外ではありません。
あのユニクロの柳井正さんでさえ、「一勝九敗」とおっしゃっています。
イチローさんは、4,000本のヒットよりも、8,000回の失敗(アウト)と向き合ったと語っていました。
成功者が本当に強いのは、「1回の成功」があったからではありません。
「9回の失敗」のあとでも、また立ち上がれる仕組みと環境を持っていたからではないでしょうか。
ところが・・
多くの経営者が、10回に1回の成功に全てを賭けるような判断をしてしまう。

過信バイアス・・
「今回こそうまくいく」という根拠のない自信・・
が、致命的な失敗への扉を開けてしまう。
私からのお願いがあります。
一度の成功を目指すより、何度も何度も挑戦できる環境をつくってほしい。
そのために必要なのが「やめる基準」です。
基準があれば、致命的な失敗を避けられる。
致命的な失敗を避けられれば、また挑戦できる。
また挑戦できれば、次の1勝に近づける。
「やめる基準」は、何度でも立ち上がるための仕組みです。
考えてみれば、当たり前のことです。
「どこまで行ったらやめる」・・
という基準がないまま挑戦するのは、出口のない迷路に入るようなものです。
どこまで行けばいいのかわからない。
だから、怖くて思い切れない。
あるいは、思い切って始めたはいいが、出口がわからないまま迷い込んでしまう。
一方、「この数字がこの状態になったら撤退を検討する」という基準があれば・・
どこまで進んでいいかが見える。
だから、思い切って踏み込める。
そして、基準に達したら、感情ではなく基準に従って判断できる。
「やめる基準」は、「やめるための道具」ではなく、「思い切って始めるための道具」なのです。
インタビューした10社の経営者たちが、危機の後に「やめる基準」を作ったのは、このことを身をもって経験したからだと思います。
では、具体的にどう作るのか。
難しく考える必要はありません。3つの問いに答えるだけです。
問い①:何を見るか?
何のデータ・指標を見て、判断するのかを決めます。
売上?営業利益?キャッシュフロー?顧客数?問い合わせ数?
「なんとなく調子が悪い」ではなく、「何の数字が、どの状態になったら」という形にします。
問い②:どのくらいになったら?
具体的な数字や状態を決めます。
「3ヶ月連続で赤字」「累積損失がXX万円を超えた」「顧客獲得コストが売上の50%を超えた」など。
曖昧な基準は、感情に上書きされます。数字で決めることが大切です。
問い③:いつ判断するか?
タイミングを決めます。
「毎月の経営会議で確認する」「四半期ごとに見直す」など。
判断のタイミングが決まっていないと、「今は忙しいから来月に」が繰り返されます。
ここで、重要なことをお伝えします。
撤退基準は、「事業を始める前」か「今すぐ」に決めてください。
なぜか。
感情が入っていない状態でないと、正しい基準が作れないからです。
社員が頑張っている姿を見た後では、「もう少し続けよう」という気持ちが入り込みます。
損失が膨らみ始めた後では、「ここまで来たら引き返せない」という感情が判断を歪めます。
冷静なときに、冷静な状態で決めておく。
そして、基準に達したら・・
感情ではなく基準に従う。
それができたとき、初めて「構造で判断する」ことができます。
「撤退基準を全部の事業に作るのは難しい」
そう感じた方は、まず一つだけ試してみてください。
今、社内で「本当はやめるべきかもしれない」と感じている事業や取り組みを一つ選ぶ。
そして、こう問いかけてみてください。
「この取り組みを続けるか判断するとき、何を見るか?」
「その数字が、どの状態になったら、撤退を検討するか?」
この2つに答えるだけでいい。
それだけで、「やめる基準」の第一歩が踏み出せます。
基準を持つことは、やめることへの準備ではありません。
思い切って挑戦するための、準備です。
その一つの基準が、これからの意思決定を、静かに変えていきます。
次回は、「意思決定ログの作り方——判断の過程を残すと、何が変わるのか」をお届けします。
「本当はやめるべきだ」と感じているのに、やめられないでいる取り組みはありますか?
もし引っかかりを感じた方は、ぜひ一度お話しましょう。
一緒に考えます!
四ケ所秀樹
ナイスオンホールディングス株式会社
代表取締役
ナイスオン公式ブログ Vol. 1,130
前回:「なぜ、あなたの”勘”は再現されないのか?——判断の前提を言語化することで、意思決定はじわじわ変わる」
次回:「意思決定ログの作り方——判断の過程を残すと、何が変わるのか」
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